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てんかんのある女性の妊娠・出産・育児 part.2

 てんかんのある女性の妊娠から出産までの薬について

 

てんかん持ちの知り合いの不安を少しでも減らすために様々な文献を見て調べました。今回はより専門的なコトバを多く載せています。少しでも参考にしてもらえたら嬉しいです!

 

 

 

 

妊娠前

必要最小限の抗てんかん薬(AED)単剤が望ましい

○トりメタジオン(TMD)は使用せずバルプロ酸(VPA)必須症例では徐放剤が望ましい

○単剤投与の目安は、

 プリミドン(PRM)・カルバマゼピン(CBZ)は400㎎/日以下

 VPAは1000㎎/日以下、フェニトイン(PHT)は200㎎/日以下

PHTまたはCBZとバルビツール剤、VPAとCBZの組み合わせは避けるべき

○発作が抑制できていない場合は、

 最低限の有効量へ変更・単剤療法に変更を計るべき

CBZとVPAは二分脊椎との関連が注目されている

 小奇形は薬物特異性の存在は疑わしい

中枢神経系の奇形は、軽度の脳萎縮・脳室拡大・透明中核のう胞など

 非特異的な所見が多く共通異常は無い。VPAの服用症例が多い

妊娠第1期服用時の出産では、

 平均奇形頻度11.1%(一般:4.8%) ※種類:口唇裂・口蓋裂・心奇形が多い

○国際共同研究において、

 奇形頻度結果は、

 単剤でPRM14.3%、VPA11.1%、PHT9.1、CBZ5.7%、フェノバルビタル(BP)5.1%

 AED量関連解析結果は、

 PRM400㎎以下で奇形発現は無く、奇形児の90%はCBZ400㎎以下、PHT200㎎以下

 VPAは投与量・血中濃度に依存して奇形発現率が増加するため、投与量1000㎎以下、

 血中濃度は70μg/ml以下が望ましい。600㎎以下では奇形を観察されず、

 1000㎎以上では29.8%の奇形頻度。VPA必要時には徐放剤が望ましい

○VPA+CBZ、PHT+PRM+PBのような特定薬剤の組み合わせが奇形発現を増加させる

 

葉酸の補充を行う

 非妊娠時0.4㎎/日、妊娠時0.6㎎/日、授乳期0.5㎎/日 ※0.4㎎→400μg

○妊娠可能か発作状況と家族・本人・主治医で要相談が必要

 

 

 

 

妊娠中

定期的な通院、胎児モニタリング、AED葉酸濃度を測定

○定期的な通院は、AED濃度測定は発作防止上有益

葉酸はDNA・RAN合成に必要

 フェノバルビタル(BP)・PHT・PRMにより減少しやすい

 低値の時は0.6㎎/日の葉酸補充

 AED増量は服薬が規則的かつ発作が悪化した時のみ

発作頻度の変化について

 変わらず:70% 増加した:20% 減少した:10%

 ※服薬が規則的であれば、全般発作83%、部分発作76%で発作頻度は変化していない。しかし、全般発作より部分発作の方が妊娠により発作頻度は変化しやすい。2年以内に発作をコントロールできている場合は、発作出現頻度は低いとの報告あり

○妊娠によりAED血中濃度が低下する症例が存在する

 血中たんぱく減少により遊離型AED増加するためAED量を増やす場合は服薬が規則的かつ発作の悪化時のみ行う

○VPA、CBZの服用例は妊娠16週で血清a-fetoprotein(AFP)の測定、

 妊娠18週で超音波検査を行う事が特に重要

  ※アルファ・フェトプロテイン(AFP)…胎児の血液・羊水に含まれるたんぱく質

○AFPが高値でも二分脊椎・無脳症の発見は超音波検査で判定できる。羊水穿刺は不要

○全般性強直間代発作を起こす場合は切迫流産や早産に注意

 

 

 

 

出産時・産褥期

通常分娩は可能 ※難産の場合は服薬を忘れないようにする

○全般性強直間代発作は1-2%発作が起きる

 部分発作や治療域にある場合は可能性が低い

○分娩前後の不規則投与によるけいれん発作の頻発、重責状態に注意

出産時にはビタミンKを投与する

 母体のAED治療に起因する新生時出血にはビタミンKの予防投与が有効

授乳は原則可能

 傾眠・低緊張・哺乳力低下などの症状があれば母乳を控え、可能なら血中濃度を測定(児が困難なら、母体と母乳の濃度)

 AEDは母体血中から種々の割合で母乳中にも排泄される

ベンゾジアゼピン(BNZ)とPRM、BPなどのバルビツール剤、母乳内移行率の高いBNZは注意

   BNZとバルビツール剤は1週間は児の体内から代謝排泄されない

新生児期の1週間に多少排泄の遅延あり

 初乳授乳を犠牲にする事の意義を十分考慮する必要あり

産後AED血中濃度が増加する場合はAED投与量を調整

○母親の睡眠不足を避ける、可能な場合は育児で家族の協力を求める

 

 

 

 

産後・乳幼児期

○小児科医、小児神経科医による心身の発達検査を定期的に受ける事が望ましい

○学童期に精神運動発達の遅れが明らかになる場合もあり

 妊娠中の発作有無よりも、育児環境・育児能力が重要

○CBZよりVPAでは、発達・集中、言語系の遅れの報告もあるが、不確か

 定期的な発達検査を行い、問題を早期発見し適切な対応が必要

○ハンディキャップ、発達の遅れがある場合には適切な指導を受ける

 

 

 

 

 

参考文献:てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性に対する治療ガイドラインより

                           http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/pregnancyGL.pdf

 

 

 

現在はラミクタールやイーケプラなど

胎児に負担の少ないAEDが増えてきています

今回書いた内容よりもリスクは減っていると思います

主治医と相談しながら

薬の調整を行ってくださいね😊