口唇裂・口蓋裂とは?
原因・確率・治療・手術の流れ・体験談までやさしく解説
口唇裂・口蓋裂(こうしんれつ・こうがいれつ)は、赤ちゃんが生まれつき持つことのある代表的な先天的な変化です。

医学の進歩により、ほとんどのケースで見た目・機能ともに大きく改善し、日常生活や学業、仕事に支障のない生活が可能です。 「口唇裂」「口蓋裂」「両方がある場合(口唇口蓋裂)」をまとめて解説し、 原因・確率・治療・手術時期・体験談まで包括的にお伝えします。
▶ 口唇裂と口蓋裂の違いとは?
| 名称 | どこの裂(割れ)か | 特徴 |
|---|---|---|
| 口唇裂 | 上唇 | 見た目の変化が中心。授乳しにくい場合も |
| 口蓋裂 | 口の中(上あごの天井) | 発音・鼻への空気漏れ・ミルクが鼻に上がるなどの影響 |
| 口唇口蓋裂 | 上唇+口蓋 | もっとも一般的。段階的治療が必要 |
ポイント
・口唇裂は「見える部分」 ・口蓋裂は「見えないが機能に大きく影響する部分」 ・両方あるケース(口唇口蓋裂)が比較的多い
・口唇裂は「見える部分」 ・口蓋裂は「見えないが機能に大きく影響する部分」 ・両方あるケース(口唇口蓋裂)が比較的多い

▶ 発生する確率(口唇裂+口蓋裂)
日本では次のように報告されています。
| タイプ | 発生率 |
|---|---|
| 口唇裂のみ | 約1,000人に1人 |
| 口蓋裂のみ | 約1,500人に1人 |
| 口唇口蓋裂 | 約700人に1人 |
先天異常の中では比較的頻度が高く、決して珍しいものではありません。
▶ なぜ起きる?原因は?
胎児の顔が形成される妊娠4〜7週頃に、上唇や口蓋の組織が完全にくっつかずに残ったことが原因です。
考えられる要因(複合的)
- 遺伝要素(両親・親族に口唇裂の既往)
- 妊娠初期の葉酸不足
- 妊娠中の喫煙・飲酒
- 薬剤の影響(ごく一部)
- 偶発的な発生(最も多い)
重要な点として、
ほとんどのケースで“母親の行動とは関係なく、自然に起こる偶発的な現象”です。 罪悪感を抱く必要はまったくありません。
ほとんどのケースで“母親の行動とは関係なく、自然に起こる偶発的な現象”です。 罪悪感を抱く必要はまったくありません。
▶ 治療と手術の流れ(口唇裂+口蓋裂)
口唇裂・口蓋裂は「形成外科」「矯正歯科」「言語聴覚士」が連携しながら治療します。
一般的な治療スケジュール
| 時期 | 治療内容 |
|---|---|
| 生後すぐ〜 | 授乳指導、専用乳首での哺乳サポート |
| 生後3〜6ヶ月 | 口唇形成術(上唇を閉じる手術) |
| 1歳前後 | 口蓋形成術(口の中の裂を閉じる) |
| 幼児期 | 構音(発音)指導が必要なことがある |
| 6〜10歳ごろ | 歯列矯正、必要に応じて顎裂部の骨移植 |
| 思春期以降 | 鼻形成、瘢痕修正など(希望に応じて) |
▶ 授乳・ミルクの苦労(実際に多い声)
・吸う力が弱く、体重が増えにくい ・口蓋裂の場合、ミルクが鼻へ逆流する ・専用乳首(メデラ、ピジョンの哺乳器)が役立つ
授乳の工夫が必要ですが、医療チームや助産師がサポートします。
▶ 発音への影響(口蓋裂がある場合)
口蓋裂では、空気の流れが鼻へ抜けやすく、次のような発音が出にくくなることがあります。
- カ行
- サ行
- タ行
しかし、言語聴覚士(ST)が介入することで改善するケースが多く、学校生活では問題なくコミュニケーションできます。
▶ 手術後の経過と傷跡
口唇裂の傷跡は、年齢とともに周囲の皮膚に馴染み、かなり目立たなくなります。
- 幼児期:薄いピンク色
- 学童期:白く細い線になる
- 思春期:ほぼ目立たないケースが多い
現在の形成外科技術では、外見的にはほとんど気づかれないレベルまで改善できます。
▶ 口唇裂・口蓋裂だったと公表している有名人
外国(例)
| 氏名 | 職業 / 国 | 公表内容(簡潔) | 出典(確認用) |
|---|---|---|---|
| Peyton Manning | NFL選手(アメリカ) | 出生時に口蓋裂があり、幼少期に修復手術等を受けたことが伝えられている(公的な医療関連記事や患者ストーリーで言及)。 | 医療/紹介記事等。 |
| Cheech Marin | 俳優・コメディアン(アメリカ) | 生まれつき口唇裂があり、手術で修復されたと本人の経歴説明や公的プロフィールに記載。 | 公式伝記・百科事典等。 |
| Stacy Keach | 俳優(アメリカ) | 自身が生まれつき口唇裂・部分的な口蓋裂で、幼少期に複数回手術を受けたことを公に語り、啓発活動にも関与。 | インタビュー/団体ページ。 |
| Carmit Bachar | 歌手(Pussycat Dolls/アメリカ) | 出生時に口唇・口蓋裂があったと本人やメディアで言及(啓発・支援活動にも携わる)。 | メディア記事/インタビュー。 |
| José Ferrer | 俳優(プエルトリコ生まれ/米国) | 乳児期に口蓋裂の手術を受けた旨が伝記に記載(幼少期に処置を受けたという記録)。 | 伝記/百科事典。 |
日本(例)
| 氏名 | 職業 | 公表内容(簡潔) | 出典(確認用) |
|---|---|---|---|
| ほしのディスコ(芸人/パーパー) | お笑い芸人 | 自伝的エッセイやインタビューで「口唇口蓋裂」であること、手術経験等を公表している。 | 文春等のインタビュー記事。 |
| 常住 奈緒(つねずみ なお) | 劇作家(ミスiD出身 等) | 自身が両側完全口唇裂の当事者であることを note / SNS 等で公表している(当事者としての発信あり)。 | 本人投稿(note)・SNS。 |
| 池田 英史(いけだ ひでふみ) | サッカー選手(社会人リーグ等) | 幼少期から口唇口蓋裂の治療を受けてきたことを本人や所属チームの紹介記事で語っている(SNS発信もあり)。 | sportsnavi のインタビュー記事等。 |
| 小林 えみか | 当事者活動家 / 元患者(NPO代表) | 自身の体験を複数メディアで告白・公表しており(20回以上の手術など)、当事者支援活動を行っている。 | 文春/Chanto 等のインタビュー記事。 |
口唇裂・口蓋裂は“あっても成功できる”ことの象徴とも言えます。
▶ 体験談・困りごと(医療現場でよく聞く声)
1. 子どもの悩み
- 写真を撮られるのが苦手
- 同級生から質問される
- 発音をからかわれた経験
2. 保護者の悩み
- 生後の授乳が大変
- 手術の日程にストレス
- 将来の見た目や言葉の心配
しかし、成長とともに本人が自信を持ち、周囲も自然と受け入れていくことが多いです。 医療の手術とサポートが整っているため、学校生活・部活・将来の仕事など、人生の選択肢は十分に広がっています。
▶ まとめ
口唇裂・口蓋裂は、医学の発展により「見た目・機能ともに大きく改善できる先天的な変化」です。 手術・矯正・発音訓練などを組み合わせることで、成長とともに自然な見た目と生活が可能になります。 家族の不安は大きいものですが、適切な医療と周囲の理解があれば、未来はしっかり開けています。